カサブランカ



休憩中にテレビを覗くとカサブランカを放映していた。


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「夕べはどこにいたの?」
──そんな昔のことは覚えていない
「今夜は会える?」
──そんな先の計画は、立てたことはない


自称ロマンチストな私でさえ顔を真っ赤にするような、そんなセリフが飛び交うカサブランカ


──俺は君を見つめているんだよ
──君の瞳に、乾杯


「君の瞳に乾杯」有名なこのセリフを言いこなせるのは大空祐飛(敬称略)しかいないと思っている。思っているという以前に、大空祐飛以外の人間がこのセリフをキザっている様子を見ると腹が立つ。許せなく思う。芸能人だけでなく、軽いノリのような気持ちで発言する友人までもだ。それくらい「大空祐飛が演じた」リックという役は衝撃的だった。映画でリックを演じたハンフリー・ボガートももちろん素晴らしかったが、本物の男性を遥かに超越する華が男役にはある。もちろん華だけではない。異性が演じる異性だからこそ観る側が受け取るトキメキがある。それを知り尽くし極めたのが男役であると私は思う。


中でも大空祐飛は私の中で格別だった。大空祐飛を見ずして宝塚ファンになった方は勿体無さすぎると思う。私も、もっと昔から大空祐飛を眺めたかった。その魅力はトップ就任後も枯れることなく大いに開花した。そんな祐飛さんの聖地宝塚大劇場でのトップお披露目公演の演目が「カサブランカ」だった。世界が崩壊するかもしれない日恋に落ち、世界の終わりのようなキスを交わした女性が突然いなくなった悲しい男の役。

(しかしいつ見ても物申したいことがある。イルザ馬鹿すぎ。イルザ多分ビッチ。リック逃すとか馬鹿すぎ。まず身が危なかったラズロと秘密結婚してラズロが死んだら寂しい未亡人の自分に優しくしてくれたリックの方へすがって愛されて愛されて愛されたのにも関わらず実はラズロが生きてたからって黙ってリックとの約束破るって最低やん。おまけにリックと別れる前あなたを心から愛してるってそれ信じれるか!!!なんやねん。あんだけ抱かれててなんやねん。ラズロは私の旦那よてなんやねん!挙句銃向けて通行証脅すてなんやそれ。)


全編スーツ作品。コスチューム物や日本物ももちろん好きだが、男役のスーツは何にも代え難い。そして何より大空祐飛の着こなしは残酷なまでに型にハマりすぎている。あり得ない。あり得ないほど美しい。「妖しいまでに美しいお前」とでも言おうか。どんなにかっこいい男性でも大空祐飛には敵わない。敵うはずがないのだ。スーツの着こなしだけではない。煙草の吸い方持ち方、座り方、お酒の飲み方、ハットの被り方、キスの仕方、抱きしめ方、男役に必要な物を全て完璧な形にして持っている。所作が全て自然であるにも関わらず丁寧。眉間の皺までもかっこいいに変える大空祐飛大空祐飛の代名詞は「極める」ではないだろうか。

祐飛さんは一見サイボーグのような冷酷冷淡な感情の無さそうな役が似合いそうだが、どこかで人間味が垣間見れる瞬間があると思う。たとえば「as time goes by」を「この曲は二度と弾くなと言ったはずだ!」の後イルザに向ける強く切ない視線と、「過去は聞かない」でイルザに向ける優しい視線の差。こういうところだ。大空祐飛が人間でよかった。

運命のいたずらにしては残酷すぎるリックとイルザ。私はこの手の作品が好きだ。正塚先生の演出が好物だと言えばわかりやすいと思う。


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はぁ〜〜〜〜〜〜かっこいい〜〜〜〜〜ほんっっっっとかっこいい〜〜〜〜〜惚れ惚れしてこそ男役!「俺たち付き合ってたんだ」きっと敵わぬ願いだが、死ぬ前に一度大空リックから言われてみたい。私も悲しみに暮れた勢いで大空リックの膝の上に座りたい。

カサブランカ」は宝塚に残すべき作品だと思うが、大空祐飛以外にこの役を完璧にこなせる生徒がいるかと聞けば私はノーと答える。


思い出は、古傷に染みるかもしれませんよ





あとひとつだけどうしても言いたくなったこと。フィナーレ最後の最後の挨拶で、いつも「ありがとうございました」と言ってどんな役であれ温かい笑顔でお辞儀をするみっちゃんにどれだけの安心と信頼を置いているであろう。そんな宝塚ファンがどれだけいるであろう。みんなみっちゃんが大好きである。